【2024. 11. 8】タイの自治体ネットワークが39か所へ拡大しました!第4回マネジメント会議 / SMART & STRONG Project for Aging Conference 2024 : Expansion of Thai Municipal Network to 39 Sites
(*English follows Japanese)
2024年11月6日から8日にかけて、本プロジェクトの第4回マネジメント会議(於:タイ東部ラヨン県タップマー市)が実施されました。8日には、これまでのタイ全国26自治体に加え、13自治体が新たに加盟するための基本合意書(MOU)署名式も執り行われました。これにより、当プロジェクトのネットワークに参加する自治体数は、全部で39ヶ所へ広がりました。
MOU署名式には、タイ全国の首長・幹部や職員、市民のボランティア(ケアギバー)等、日本から在タイ日本国大使館、国際協力機構(JICA)タイ事務所、神奈川県湯河原町(内藤喜文町長)、NGO野毛坂グローカルなど、合わせて300名近くが臨席しました。
本SMART & STRONGプロジェクトは、社会の成熟に伴い高齢化がすすむタイと日本において、地域の力を最大限に活かした高齢者ケアを行うため、自治体や大学、民間事業者などがネットワークを構築し、相互の学び合いによって今後のケアのあり方を模索する国際協力の試みです。2022年8月から2025年7月までの期間、国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業のスキームを活用して実施しています。
タイの自治体ネットワークは、2020年10月にタイのブンイトー市・タップマー市の2自治体で開始され、2021年に4ヶ所、2022年8月(草の根技術協力事業開始時)に9ヶ所、2023年7月(第2回マネジメント会議時)に26か所、そして今回39ヶ所へと急速に拡大してきました。これら自治体や関係協力機関の間での学び合いを通して、認知症への取り組み、デイケアセンターの運営、DXの活用など、基礎自治体と地域住民が主導するコミュニティベースの成果が多く生まれ、タイ中央政府の政策にも影響を与えているとも報告されています。タイ国内のみならず、日本をはじめ、マレーシア、スリランカ、アメリカ、韓国など、多くの国の政府機関や民間団体による訪問を受けており、国際的にも注目をあびています。
11月6日(水)エクスカーション:タップマー市の高齢者ケア活動
タイの自治体職員、また日本から湯河原町役場(内藤町長)をはじめとする訪問団が、タップマー市における高齢者ケアの取組について説明を受け、デイケアセンターや認知症カフェなど現場での活動の様子を見学しました。
11月7日(木)全国会議(テーマごとに各自治体の取組を報告)
全国会議として、タイ全国からオンラインも含め約230名の自治体幹部や高齢者ケア担当者が集まりました。タマサート大学社会福祉学部教授ら(ワンナラック准教授、ナタパット助教授、タンヤポーン助教授)がファシリテーションするカンファレンス形式により、各自治体の発表者が横並びに登壇し、「認知症ケア」「デイケアセンター」「イノベーション」などのテーマ毎に、高齢者ケアの施策や活動、今後の展望を報告し合いました。
日本側から出席の村瀬公大 湯河原町議長も、開会挨拶において「この場で得た知見を湯河原へ持ち帰り、紹介したいと考えている。このプロジェクトを通じて、高齢化対策のみならず、日本・タイ双方の学び合いが地域コミュニティの発展に繋がることを心より期待している」とお話されました。
<プログラム>
- 開会挨拶:タップマー市助役、湯河原町議長
- フォーラム1:認知症ケア&認知症カフェ
- フォーラム2: ディケアセンター
- フォーラム3:ヘルスとソーシャル・イノベーション
- フォーラム4:その他の取組
- 有識者によるコメント
全国会議の様子(タイ語)は、タップマー市による中継映像(外部サイト:Facebook Live)からご覧いただけます。
11月8日(金)運営委員会・評価委員会・アドバイザー委員会
約300名の出席のもと、プロジェクト運営委員会、MOU署名式(13自治体の新規加盟)、評価委員会、アドバイザー委員会が実施されました。
タイ語・日本語で実施された当日の様子は、タップマー市による中継映像(Facebook Live: 第1部・第2部)からご覧いただけます。
冒頭、タイ側(タップマー市長、ラヨン県知事、ブンイトー市長)と日本側(湯河原町 内藤喜文町長、在タイ日本国大使館 小林洋介一等書記官)より、ご挨拶をいただきました。
内藤湯河原町長は挨拶にあたり、当プロジェクトの関係者・機関への感謝を述べられました。また、タイの各自治体における高齢者ケアの取組が発展してきたことに感銘を受け、近隣諸国からも注目を集めている等、更なる活動の広がりへの期待を表明されました。
在タイ日本国大使館の小林書記官は、これまで日本が蓄積してきた介護のノウハウや、タイにおける地域コミュニティの繋がりの強さ等を活かし合い、双方向に経験を共有する協力の在り方に意義を感じている旨を述べられました。当プロジェクトを通じて、タイ独自の高齢者ケアの在り方が深まっていくこと、また、ひるがえって日本の介護への有益な示唆をもたらし、結果として両国の絆が深まっていくことへの期待をお話いただきました。
続いて、ラヨン県知事よりプロジェクト関係者へ「感謝盾」を贈る授与式が行われ、その後、新たに加盟する13自治体とのMOU署名式が執り行われました。
新たに加盟する13自治体名称
- サラブリ県サラブリ市
- ラチャブリ県パクトー市
- サケオ県ワンナムイエン市
- ナコンラチャシマ県ムーシー市
- マハサラカム県ボラブー市
- パトムタニ県クロンサム町
- サラブリ県ナムプララン町
- ラチャブリ県ルムディン市
- ノンカイ県ターボー市
- ラヨン県マカムクー市
- ノンタブリ県バンヤイ市
- ソンクラ県ハジャイ市
- サムットプラカン県テープハラック市
その後、タップマー市助役より「誰ひとり取り残さない」方針のもと行っている高齢者ケアの詳細や特徴が報告され、また限られた自治体予算の中でもデイケアセンターを持続的に運営するため、ボランティアやネットワークの力を最大限生かすなど、様々な工夫をしながらパイロット事業として進めている旨が述べられました。高齢者本人が健康を維持するための方法を知ることができる体制をつくり、また認知症カフェ等のコミュニティ活動を通じて、本人だけでなく家族や地域住民との繋がりを感じられる大切さを説明しました。高齢者ケアの施策を進めるうえで各自治体が抱える様々な課題なども赤裸々に表明しながら、お互いに学び合い、困難を克服するための解決策などを見出していきたいと語りました。
また、タマサート大学社会福祉学部ワンナラック准教授より、開始から2年以上が経過した当SMART & STRONGプロジェクトについて、各地域の状況や高齢者の暮らしぶりを基にコミュニティベースの活動計画・実施が進み、拡大する自治体ネットワークを通じてより効果的な学び合い体制が築かれてきた旨が報告されました。
<プログラム>
- 開会挨拶(タップマー市長、ラヨン県知事、ブンイトー市長、湯河原町長、在タイ日本国大使館書記官)
- ラヨン県知事よりプロジェクト関係者への感謝盾授与
- 新規加盟13自治体によるMOU署名式
- 写真撮影
- タップマー市高齢者クラブによるデモンストレーション(ダンス披露など)
- タップマー市のコミュニティにおける高齢者ケアサービスの方針報告(タップマー市助役)
- SMART&STRONGプロジェクトの取組説明(タマサート大学社会福祉学部ワンナラック准教授)
- 過去1年間のプロジェクト活動報告(ブンイトー市ティティナン医師)
- 今後の活動計画(湯河原町地域政策課 中村哲 副課長)
- 評価レポート
- 有識者によるコメント
午後には、ブンイトー市ティティナン医師により、具体的なプロジェクト活動内容が報告されました。北海道や神奈川県(湯河原町)への訪日研修、また日本の専門家や学生等によるタイの自治体訪問・見学、およびセミナー実施や現地調査・研究等の取組について説明しました。タイ国内だけでなく、高齢者ケアに係る国際的なネットワークや交流を見据え、ラオスやフィリピン、マレーシアや韓国などと、プロジェクト関係自治体職員などが意見交換を始めた旨も共有されました。
続いて、湯河原町役場地域政策課 中村哲副課長により、2025年7月までの当プロジェクトの活動計画について報告されました。国際会議での発表を見据えた各自治体の活動とりまとめや、各地でのマニュアル・ガイドライン策定、また研修・セミナー等の実施予定が説明されました。加えて、周辺国との情報交換を進めていく旨も述べられました。
評価委員会として、大阪経済大学 沖浦文彦教授より、当プロジェクトのマネジメント手法に焦点を当てながらレビューをいただきました。高齢化と高齢者ケアに関する当プロジェクトでは、目標となる社会の「ありたい姿」の定義がタイ全国の各地域・個人の状況によって多様になされ、また時間軸に伴う人口動態や社会経済状況などの変化により流動的である前提が共有されました。その上で、ネットワークを構成する自治体同士が学び合う基本方針をもとに、学んだことを自ずからのオーナーシップで実践し、さらに実践の結果を共有し合うという「好循環」をつくる事が特徴的だと説明されました。「日タイの対等な関係」「関係者のオーナーシップ」「他者から学ぶためのオープンな姿勢」「メンバーの多様性と経験」などがこのプロジェクトの成功要因として報告され、今後の新しい国際協力のありかたを示唆するものと述べられました。
有識者からのコメントとして、大阪公立大学 永井史男教授により、ネットワークに参画する自治体の規模(小規模ー大規模)や形態(農村ー都市、地理的要因など)の多様性が重要であること、中央政府の政策・法制度と基礎自治体の関係性等についてお話いただきました。また、社会福祉士である吉備国際大学 横山明子講師により、日本の介護分野の視点や課題認識なども基に、地域のなかで高齢者を支える取組を両国間で学び合う事への期待をコメントいただきました。加えて、東京大学博士課程の三好友良氏により、タイの各自治体による創意工夫を凝らした取組が、今後の高齢者ケアに係る国家制度へどのような影響をもたらしていくのか等、関心や期待の旨が述べられました。
また、JICAタイ事務所の福田尚正氏により、「JICA草の根技術協力事業」のスキームとして、各基礎自治体との協力をはじめ、現場に沿った形で高齢者ケアの体制づくりを進めていく点で極めて重要な取組であるとの考えが述べられました。
更に、タマサート大学社会福祉学部のナタパット助教授は、各自治体の幹部や医療・保健分野担当者だけでなく、社会福祉分野の専門職(ソーシャルワーカー等)や、地域住民のボランティア(ケアギバー等)といった市民の代表が、今回のマネジメント会議のような場へ参加する重要性について説明しました。加えて、様々な高齢者の状況に対応してケアをする技術や専門職人材の量と質、またリスクやケアプランに関する評価手法などの発展が今後の課題でもあり、日本が蓄積するノウハウを学びながら取り組んでいきたい旨が述べられました。
From November 6 to 8, 2024, the 4th Management Meeting of the SMART & STRONG Project was held at Thapma Municipality, Rayong Province, located in the Eastern part of Thailand. Through the MOU (Momemrundum of Understanding) Signing Ceremony, an additional 13 municipalities in Thailand officially joined the network of mutual learning on community-based integrated elderly care. In total, the number of local authorities in the network expanded from 26 (Since August 2023) to 39 Sites this time.
At the ceremony, there are around 300 guests and participants. From the Thai side, Chief Executives of Rayong Province, Mayors, Executives, Officials of Municipalities, Representatives of CItizens, researchers, experts, and others attended the ceremony. Also, from the Japanese side, the guests and participants are from the Embassy of Japan in Thailand, the Japan International Cooperation Agency (JICA) Thailand Office, Yugawara Municipality (Mayor Mr. Naito), NGO NOGEZAKA-GLOCAL, researchers, experts, and volunteers.
November 6 (Wed.) : Excursion on the Field of Elderly Care in Thapma Municipality
Thai municipal staff members, representatives of citizens, and Japanese visitors learned on-site activities from Thapma Municipality's program and initiatives of community-based integrated elderly care. For instance, they visited the fields of Thapma Day Care Center and Dementia Cafe.
November 7 (Thu.) : National Conference with Theme-based Reports and Discussion
Around 230 guests and participants assembled both on-site and online, and municipality members in charge of elderly care shared unique initiatives and learned from each other based on discussion topics such as 'Dementia Care,' 'Day Care Center,' 'Health and Social Innovation,' etc. Each forum for reports and panel discussion was facilitated by professors from Thammasat University Faculty of Social Administration (Assoc. Prof. Dr. Wannalak Miankerd, Asst. Prof. Dr. Nattapat Sarobol, and Asst. Prof. Dr. Thanyaporn Chantaravech). The Chief Municipality Clerk, Thapma Municipality, and Mr. Koudai Murase, Chair of Yugawara Town Council, made opening remarks at the beginning of this conference.
Live streaming of the program is available (in Thai) from the Thapma Municipality's Facebook Page.
<Program>
- Opening Remarks:Chief Municipality Cleark of Thapma Municipality (Thailand), Chair of Yugawara Town Council (Japan)
- Forum 1: Dementia Care & Dementia Cafe
- Forum 2: Day Care Center
- Forum 3: Health and Social Innovation
- Forum 4: Other Initiatives
- Comments by Advisors
November 8 (Fri.) : Management Committee, Evaluation Committee, Advisory Committee
With the attendance of around 300 guests and participants, the Management Committee, Evaluation Committee, and Advisory Committee were held on November 8th.
Live streaming is available to watch (both in Thai and Japanese language) from the Thapma Municipality Facebook Page (Part 1 / Part 2).
At the opening segment, remarks were made by the Mayor of Thapma Municipality, the Chief Executives of Rayong Province, the Mayor of Bueng Yitho Municipality, the Mayor of Yugawara Town (Mr. Yoshifumi Naito), and the First Secretary of the Embassy of Japan in Thailand (Mr. Yosuke Kobayashi).
Then, appreciation trophies were awarded by the Chief Executive of Rayong Province to the organizations and agencies engaging in this project. After that, the MOU Signing Ceremony was implemented regarding the expansion of the Thai municipal network to 39 sites.
<Program>
- Opening Remarks
- Appreciation Trophies Award Ceremony
- MOU Signing Cereony with additional 13 municipalities
- Demonstration by Older Citizens in Thapma(Dance Performance etc.)
- Report of Thapma Municipality's Community-based Elderly Care
- Explanation about SMART&STRONG Project
- Report of SMART & STRONG Project Activities in the past 1 year
- Prospects & Activity Plans of SMART & STRONG Project
- Evaluation Report
- Comments by Experts, Researchers, & Floors
At the afternoon session, the Chief Municipal Clerk of Thapma Municipality and Assoc. Prof. Wannalak from Thammasat University reported Thapma Municipality's elderly care program and this SMART & STRONG Project's good practices with cooperation among member municipalities/organizations.
Then, Medical Dr. Thitinan Nakphu from Bueng Yitho Municipality explained the specific contents of project activities in the past 1 year, and Mr. Tetsu Nakamura, Deputy Director of the Policy & Planning Division of Yugawara Municipal Office presented prospects/activity plans through this project.
Following the management committee, evaluation and advisory committees were held thanks to the experts'/researchers' cooperation.
In the evaluation report segment, Prof. Fumihiko Okiura from the Osaka University of Economics reviewed this project, focusing on the practices and strategies of project management for making vicious cycles through mutual learning, and presented the possible success factors.
After that, researchers and experts made advisory comments on this project. Prof. Fumio Nagai from Osaka Metropolitan University analyzed and advised the importance of diversity in scales and types of municipal organizations in the network. From the point of view as a Social Worker in Japan, lecturer Dr. Akiko Yokoyama from Kibi International University analyzed and showed expectations for the development of community-based care both in Thailand and Japan. Mr. Yusuke Miyoshi, a doctoral student at the University of Tokyo also showed his interest and expectations on how the unique initiatives implemented by each local authority will influence national policy, system, and institution to respond to population aging in Thailand.
Then, Asst Prof. Nattapat Sarabol explained the importance of empowering social workers, caregivers, volunteers, citizens, etc., and concluded whole evaluation and advisory comments at the end of committees.