
SMART & STRONG プロジェクト
日本およびタイの基礎自治体が主体となり、NGOや大学、民間事業者、医療・介護専門職や市民ボランティアなどと共に、地域での持続可能な高齢者ケアの仕組みづくりを学び合う ―― 実践コミュニティ(Community of Practice)を共創する ―― 自治体連携 × 国際協力プロジェクト
- JICA草の根技術協力事業(地域活性型)として、神奈川県湯河原町を運営主体として実施
- 2022年8月~2025年7月のフェーズ1事業を完了 (事業評価報告書 JICAホームページ)
- 2026年3月~2029年2月にかけてフェーズ2事業を実施中(案件概要表 JICAホームページ)
概要
世界的に高齢化が進む中、タイではその速度が特に顕著です。2015年に10%強だった高齢化率は、2022年には14%を超え、今後ますます医療費・介護費が増加すると予想されています。
これまで中央政府主導で在宅ケアやリハビリテーション、デイケアセンターの整備が試行的に進められてきましたが、財源や受益者の偏りが課題となっています。地方分権化の流れに伴い、地域・自治体レベルで高齢者ケアモデルの構築・普及が急務とされています。
SMART & STRONG プロジェクトは、日本やアジア諸国との学び合いを通じて、地域主導の持続可能な高齢者ケアの推進を目指す国際協力プロジェクトです。地域の主体性と住民参加を重視しながら、各地域の実情に沿った取り組みを対等に学び合うことで、「誰ひとり取り残さない」地域包括ケアの実現と広がりを目指しています。
プロジェクト基本情報を見る(ここをクリック)
| ◆ 正式名称(英語) | Project to Promote Community-Based Elderly Care Using Local Resources through Municipal Networks with Opportunities for International Learning Exchange |
| ◆ 正式名称(日本語) | タイ国自治体ネットワークによる地域資源活用型高齢者ケアモデル普及と国境を越えた学び合いプロジェクト |
| ◆ 正式名称(タイ語) | โครงการส่งเสริมการดูแลผู้สูงอายุโดยชุมชนผ่านเครือข่ายและทรัพยากรขององค์กรปกครองส่วนท้องถิ่นและการสร้างโอกาสการแลกเปลี่ยนเรียนรู้ระดับนานาชาติในประเทศไทย |
| ◆ 略称(共通) | SMART & STRONG Project |
| ◆ 事業スキーム | JICA草の根技術協力事業(地域活性型) |
| ◆ 実施機関 | 独立行政法人国際協力機構(JICA) |
| ◆ 運営機関(日本) | 神奈川県湯河原町 |
| ◆ 運営協力(日本) | NGO野毛坂グローカル 他 |
| ◆ 運営機関(タイ) | 自治体ネットワーク加盟39自治体(2026年4月時点) カウンターパート:パトムタニ県ブンイトー市 |
| ◆ 運営協力(タイ) | タマサート大学、チュラロンコン大学、社会開発人間安全保障省 他 |
| ◆ 事業目標 | 自治体ネットワークの運営体制が確立し、地域の住民、有償/無償ボランティア、企業、公共施設など地域の資源を最大限活用した持続可能な高齢者ケアモデルのマニュアルやガイドラインが整備され、自治体ネットワークに加盟する各自治体で適用、活用、実施される。 |
| ◆ 対象地域 | タイ全土の地域、規模、宗教、産業などの多様なバランス配慮した約39箇所の自治体 |
| ◆ 受益者層 | 直接受益者:タイの自治体ネットワークの職員 間接受益者:タイの自治体ネットワークの住民(39ヶ所の自治体の住民約80万人) |
| ◆ 実施機関 | 2026年3月〜2029年2月 |
| ◆ 生み出すべきアウトプット | 1. 地域資源活用型高齢者ケアモデル実施に必要な認知症ケア、口腔ケア、栄養などの技術が主要自治体で習得され、自治体ネットワークを通じて各地に広がる 2. 湯河原町とタイで様々なレベル/形態で、持続可能な形で高齢者ケアに関する様々な学びあいが実施される体制が整備され、実施される 3. タイの基礎自治体ネットワークが効果的に持続可能な形で維持発展する体制が整備され、運営され、その結果として学び合いの成果による活動が各地で実施される |
| ◆ 主な活動 | 1. 現地の多様なニーズ、より専門的に求められるニーズに適応した技術の指導 2. 湯河原町を含む日本とタイ国内の自治体の学びあいが持続発展するシステムの確立 3. タイ国内の自治体が相互に学びあうシステムの確立のための支援 |
| ◆ ウェブサイト・SNS | Website:https://smart-strong-project.org/ Facebook:@thjp.smartstrong Instagram:@thjp.smartstrong X:@thjp_networks |
背景
ブンイトー市について
本事業のカウンターパートであるパトムタニ県ブンイトー市は、タマサート大学社会福祉学部や神奈川県湯河原町、NGO野毛坂グローカルなどと協力しながら、市民参加型の統合的な高齢者ケアを推進してきました。

人口3.5万人(住民登録をしていない住民を含めると約10万人)
- 医療・リハビリテーションセンター(ブンイトー市立病院)、デイケアセンター、高齢者活動センター(現在は高齢者のみではなく全世代を対象)をはじめとする拠点を自治体主導で整備するとともに、在宅介護や民間の入居型施設との連携も図ってきました
- また、WHOグローバルネットワーク『エイジフレンドリーシティ』にタイで初めて加盟しました
このように、(バンコクなど大都市を除いた)一般的な基礎自治体として主導する高齢者ケアは、タイで最も進んだ取り組みの1つであり、タイ国内各地および国外から多くの視察団が訪れています。
湯河原町について
神奈川県湯河原町は、日本国内で最も高齢化率が高い自治体の1つですが、要介護認定率は比較的低いなど元気な高齢者が多く、また国際交流も盛んです。湯河原町で活動するフレイルサポーターや認知症カフェ運営ボランティアもタイ現地を訪問し、タイ側ボランティアらと相互の学び合いを行いました。また、タイの有償ボランティアによる高齢者ケア活動を参考としながら、2025年度から「住民が住民を支える高齢者福祉の推進」事業を予算化し、一定の研修を受けたシルバー世代が有償ボランティアとして活躍する仕組みを構築・実践しています。
- JICA横浜ウェブサイトでの紹介記事「タイにおける最終会合と日タイ市民ボランティアの学び合いを開催」
2022年以前の取り組み
- 自治体国際化協会機関誌に掲載された当事業の成り立ち(記事はこちら)
2019年、ブンイトー市、NGO野毛坂グローカル、タマサート大学、神奈川県湯河原町が、高齢者ケアに係る協力協定を順に締結しました。2020年には、自治体国際化協会(CLAIR)による自治体国際協力促進事業に採択され、「タイ国ブンイトー市高齢者デイケアセンター設立支援プロジェクト(高齢者支援分野)」として実施しました(CLAIR事業報告書)。
ブンイトー市の取り組みは国内外から高く評価され、日本政府の推進する「アジア健康構想」の一貫で実施された第1回アジア健康長寿イノベーション賞において「準大賞」を受賞しました。
2020年、ブンイトー市の取り組みの更なる発展と共に、国全体への普及を見据えてタイの他自治体へ広げていくために、「ネットワークを通した普及」が開始しました。まずは、ブンイトー市、ラヨン県タップマー市、ロブリ県カオプラガム市、プラチャップキリカン県ホワヒン市が情報交換をはじめました。上記タイの4自治体および、湯河原町、NGO野毛坂グローカル、タマサート大学による協力体制が評価され、第2回アジア健康長寿イノベーション賞にて、「大賞」を受賞しました。




JICA事業フェーズ1
日タイの高齢者ケアの学び合いは、JICA草の根技術協力事業として採択され、2022年8月から2025年7月にかけて実施されました。当初9か所から開始したタイの自治体ネットワークは、3年間を通じて39か所へと拡大しました。自治体同士が互いの実践や課題から学び合い、その結果、認知症ケア、デイケアセンター、研修、住民ボランティアによる在宅ケア、高齢者ケア施策策定など、多様な取り組みが各地で展開されました。また、プロジェクトで作成されたマニュアル、ガイドライン、教育動画などは、現在タイ国内各地で活用されています。
フェーズ1の成果を数字で見る(ここをクリック)
| 成果項目 | プロジェクト開始前 | プロジェクト実施後 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 自治体ネットワーク加盟自治体数 | 9自治体 | 39自治体 | タイ全国へ拡大 |
| デイケアセンター | 3か所 | 8か所 | 追加拠点も整備中 |
| 認知症カフェ | 0か所 | 4か所 | タイ国内で初めて導入 |
| 認知症サポーター事業 | 0か所 | 4か所 | 地域啓発・ボランティア育成 |
| 自治体高齢者アクションプラン | ― | 25自治体 | 地域ごとの高齢者ケア施策を策定 |
| 自治体間学び合い視察 | ― | 150回以上 | 自治体同士の相互学習を活性化 |
| プロジェクト訪問者・視察者 | ― | 170団体以上・9,700人以上 | 行政、大学、NGO、国際機関など |
| 全国会議の開催 | 0回 | 4回 | 全国規模の学び合い・共有の場を形成 |
| ガイドライン・マニュアル作成 | 0件 | 6件 | 具体的な取り組みや施設運用に関する指針 |
| 教育・研修動画制作 | 0本 | 9本 | 研修および普及啓発教材 |
| 国際連携 | タイ・日本中心 | タイ、日本、マレーシア、ラオス、カンボジア、韓国、フィリピン、スリランカ | 国境を越えた学び合いを開始 |
| 学術・国際発表 | ― | 11件以上 | WHO西太平洋地域事務局ウェビナー(2025)、WHO15th Eurasia Forum of Social Workers(2024)、国際開発学会(2023)、日本タイ学会(2024)、アジア欧州会合(ASEM)「高齢者の人権に関する国際フォーラム」(2022)他 |
| メディア発信 | ― | 多数 | NHK国際報道、タイPBS(公共放送)、朝日新聞、外務省開発協力白書、国際開発ジャーナル、自治体国際化フォーラム 他 |
| 自治体による主体的運営 | ― | 強化 | 自治体による自主財源活用が進展 |

ネットワーク拡大のあゆみ(9 → 39か所)
2022年8月 プロジェクト開始時(9自治体)
2023年7月 MOU署名式(26自治体)
2024年11月 MOU署名式(39自治体)
事業フェーズ2が目指すもの
フェーズ2 では、自治体ネットワークをさらに発展させながら、タイ全土における持続可能な地域包括ケアモデルの構築を目指します。フェーズ1 の成果をもとに、自治体、住民、ボランティア、医療・福祉専門職、企業、大学、NGOなど、多様な主体が協働しながら高齢者を支える仕組みづくりを強化していきます。また、国を跨いだ学び合いの輪を広げることで、アジア地域全体での高齢化対応にも貢献していきます。
主な方向性(3つの柱)
1. 多様化・高度化する高齢者ケアのニーズへ対応
認知症ケア、口腔ケア、栄養、リハビリテーション、ケアマネジメントなど、多様化・高度化するニーズに対応できる知見・技術の共有を強化する
2. 持続可能な学び合いネットワークの強化
日タイの自治体、大学、市民、医療・福祉機関、民間企業などをつなぐネットワークを発展させ、プロジェクト終了後も継続的に学び合いが行われる仕組みを構築する
3. アジアにおける越境的連携の拡大
マレーシア、ラオス、カンボジアなど近隣諸国との学び合いを推進し、地域包括ケアや高齢化政策に関する広域的なネットワーク形成を目指す
| フェーズ 1 | フェーズ 2 | |
|---|---|---|
| 参加自治体数 | 9か所から開始 | 39か所へ拡大し開始 |
| 参加自治体の多様性 | 小規模自治体の参加が限定的 | 自治体規模、地理的環境、宗教、産業など、より多様性を反映したネットワークへ |
| ネットワークの拡張 | 高齢者ケアに積極的な自治体ネットワークを構成 | ネットワークを通じた自治体主体の取り組み・知見共有が自律的に拡大 |
| 国境を越えた学び合い | 日タイの学び合いが中心 | アジア地域全体へ学び合いを展開 |
本事業は、一方向的に優れたモデルを「輸出」「指導」するのではなく、「対等なパートナーシップ」の考え方を重視しています。それぞれの地域が互いに学び合い、自地域の文脈に合わせて柔軟に発展させていくことを目指しています。
この過程を通じて、タイにおける高齢者ケアだけでなく、日本を含むアジア各国の高齢社会対応へ新たな知見や可能性を共創していきたいと考えています。









